暮らしを削らずに働き続けるための、時間と場所の設計

自宅でパソコン作業をする男性と、子どもを抱いて見守る女性

小さな事業のサステナビリティ」は、環境配慮を特別な取り組みとして切り離すのではなく、日々の事業運営の中で無理なく続けられる判断として捉えるシリーズです。前回は、オンラインで届けることが、環境負荷の軽減や事業の継続性にどのようにつながるのかを整理しました。

働き続けるためには、仕事量を増やすことだけでなく、暮らしを削りすぎない設計が必要です。

小さな事業は、働く時間も、働く場所も、判断の多くが自分に委ねられます。自由度が高い一方で、境界線を引かないまま進めてしまうと、休む時間、家族と過ごす時間、体を整える時間が少しずつ後回しになります。

事業を続けるうえで大切なのは、常に多くの時間を仕事に投下することではありません。どの時間帯に集中するのか、どこで働くのか、どこから先は仕事を入れないのかを決めておくことです。

この記事では、小さな事業を無理なく続けるために、暮らしを削らずに働く時間と場所の設計について整理します。

働く時間を決めることは、暮らしを守ることでもある

自宅のリビングで子どもを囲んで過ごす家族

以前、起きている時間のほとんどを仕事に捧げていた時期がありました。

早朝、まだ家の中が静かな時間に起きて仕事を始め、朝一番に子どもを保育園へ預ける。夕方は19時ぎりぎりに迎えに行き、子どもを寝かしつけたあと、またパソコンに向かう。休日も仕事を優先し、子どもを預けて作業時間を確保していました。

最初は「好きだからやりたい」という気持ちでした。けれど、いつの間にかそれは「やらなければいけない」に変わっていきました。

休むこと、食べること、眠ること、家族で過ごすこと。暮らしを支えているはずの時間が、少しずつ仕事の外側へ追いやられていきました。その結果、体調を崩し、気分もふさぎ込みました。

小さな事業では、働く時間を自分で決められます。けれど、それは同時に、仕事をどこまでも広げられてしまうということでもあります。明確な区切りを持たないまま働き続けると、仕事は生活の余白を静かに侵食していきます。

だからこそ、働く時間を決めることは、単なるスケジュール管理ではありません。暮らしを守りながら事業を続けるための、経営判断のひとつです。仕事に使う時間を決めることは、同時に、休む時間、家族と過ごす時間、自分の体を整える時間を先に確保することでもあります。

働く場所を分けることで、仕事と生活の境界線をつくる

玄関で家族を見送るスーツ姿の男性と、子どもを抱く女性

私は家の中が好きで、仕事も自宅で行うことがほとんどです。

自宅で働く場合、通勤時間がない分、仕事に入りやすい一方で、生活との境界線が曖昧になりやすくなります。だからこそ、パソコンを広げるテーブルの上は、できるだけきれいに片付けるようにしています。溜まった食器や洗濯物が視界に入らないようにし、子どものおもちゃも登園前に片付けてもらう。仕事を始める前に、目に入る景色を整えることで、集中しやすい状態をつくっています。

反対に、子どものお迎えの時間が近づいたら、仕事を終えるための手順を決めています。日報を書き、不要なファイルやフォルダをMacから削除する。Notion、ChatGPT、Canva、WordPressなど、仕事で使っていたものはすべて閉じて、画面から消します。

そのあと、お迎えに行くまでの少しの時間は、ぼんやりと思考を手放します。仕事の続きを頭の中で抱えたまま子どもと向き合うのではなく、一度、仕事の景色を閉じる。その時間があることで、帰宅後は一緒におやつを食べたり、会話を楽しんだりしながら、晩ご飯の準備に移りやすくなります。

自宅で働くからといって、仕事用の部屋を必ず用意しなければならないわけではありません。大切なのは、同じ家の中でも、仕事に入るための景色と、暮らしに戻るための手順を意識して分けることです。

働く場所を分けるとは、物理的に別の場所へ移動することだけではありません。視界、道具、画面、片付け、終わり方を整えることでも、仕事と生活の境界線はつくれます。自宅で働き続けるためには、その小さな境界線が、暮らしを守る大事な仕組みになります。

続けられる事業には、余白を残す設計が必要になる

自宅で子どもを抱いて笑顔を見せる女性

事業を続けていくうえで、予定をすべて仕事で埋めることは、一見すると前向きな努力のように見えます。けれど、余白のない働き方は、少しの体調不良や家庭の予定、急な対応が入っただけで簡単に崩れてしまいます。

小さな事業ほど、自分自身が止まると全体も止まりやすくなります。だからこそ、あらかじめ余白を残しておくことは、甘えではなくリスク管理です。毎日を限界まで使い切るのではなく、動けない日があっても立て直せる幅を持たせておく。その設計が、長く働き続けるための土台になります。

たとえば、頑張りすぎた週の翌週は、判断力をあまり使わない作業を中心にします。取材や面談をあえて入れず、人と会う予定をゼロにすることもあります。すべての週を同じ強度で走ろうとしないことも、事業を続けるためには必要です。

また、休日は、仕事を一切しない日として扱います。休むことを、予定として入れる。天気がいい日は淀川の河川敷を散歩したり、子どもと公園に行って、滑り台を梯子したりする。映画を観る日もあれば、外食をする日もあります。お菓子を食べながら、好きなドラマを自宅でのんびり観る時間も、暮らしを立て直すための大切な余白です。

余白は、勝手に生まれてくるものではありません。仕事を入れない日を決めること、判断しなくてよい日をつくること、暮らしに戻る時間を先に確保すること。そうして意識してつくらなければ、予定はすぐに仕事で埋まっていきます。

働き続けるために必要なのは、常に最大稼働で走ることではありません。暮らしを守りながら、事業として必要な仕事を積み重ねられる状態をつくることです。時間と場所に余白を持たせることは、暮らしを削らずに働き続けるための、現実的な事業設計です。

社会事業開発ACTIONのサステナビリティへの考え方

本記事で紹介した、暮らしを削らずに働き続けるための時間と場所の設計は、社会事業開発ACTIONが事業運営の中で大切にしているサステナビリティの一部です。

当組織では、事業を続けるために人の時間や体力を使い切るのではなく、働く人の暮らし、心身の状態、家族との時間を守りながら、無理なく継続できる運営を重視しています。

サステナビリティは、環境負荷を抑えることだけではありません。事業に関わる人が燃え尽きず、必要な仕事を長く続けられる状態を整えることも、持続可能な事業運営の大切な要素です。

社会事業開発ACTIONがサステナビリティについてどのように考え、どのような取り組みを進めているかは、以下のページでご覧いただけます。


CONTENTS
紙で配らない、在庫を持たない。小さな事業ができる環境負荷の減らし方
オンラインで届けることは、効率化だけではない。小さな事業が無理なく続く提供設計
情報過多の時代に、価値が届かない構造をどう変えるか。堀寛未が見た小規模事業者の情報流通課題
後発のローカルメディアは、先行メディアと同じ土俵で戦わない。Re:HIRAKATAで考えた差別化と運営戦略
情報発信が型に回収される時代に、言葉の温度をどう残すか。煽りではなく、信頼で届く文章を考える


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緑の街並みと植物を背景に、小さな事業のサステナビリティと表示されたバナー画像
堀 寛未

社会事業開発ACTION代表。大阪府枚方市を拠点に、広報・ブランド設計・情報発信支援を行っています。ローカルメディア「Re:HIRAKATA」では、取材・記事制作・発信設計を一貫して担い、事業や地域の取り組みを、伝わる言葉と構成に整えることを得意としています。

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