後発のローカルメディアは、先行メディアと同じ土俵で戦わない。Re:HIRAKATAで考えた差別化と運営戦略

手帳にペンで書き込みをする女性の手元

大阪府枚方市でローカルメディア「Re:HIRAKATA」を立ち上げたとき、地域にはすでに「枚方つーしん(通称:ひらつー)」さんという強い先行メディアがありました。

長く地域で読まれている媒体がある中で、後発のローカルメディアが同じ土俵に立つと、速報性・情報量・認知度の面で不利になります。閉店・開店、地域ニュース、イベント情報は地域にとって大切な情報ですが、事実を扱う以上、誰が書いても内容が似やすい領域でもあります。

そこで差別化しようとすると、強いキャラクター性や、煽りのある見せ方、過度な親しみやすさに寄りやすくなります。けれど、それはRe:HIRAKATAでやりたいことではありませんでした。

そこで選んだのが、「枚方で叶える、ちょっとだけ丁寧な暮らし」というコンセプトです。枚方市民全体に向けた地域情報サイトではなく、枚方で暮らす40代の働く女性に向けて、上品で誠実なローカルメディアとして設計しました。

その結果、立ち上げから約半年後には、「枚方市 ローカルメディア」の検索結果でRe:HIRAKATAが1位に表示されることを確認できました。この記事では、後発のローカルメディアが先行メディアと同じ土俵で戦わないために、Re:HIRAKATAで考えた差別化と運営戦略を整理します。

「枚方市 ローカルメディア」の検索結果でRe:HIRAKATAが1位に表示されている画面

ローカルメディアは、地域ニュースだけを扱う媒体ではない

明るい空間で上を見上げる女性

ローカルメディアと聞くと、閉店・開店、地域ニュース、イベント情報を思い浮かべる人は多いと思います。

どこに新しいお店ができたのか。どの施設でイベントが開かれるのか。暮らしに関わる制度や街の変化に、どんな動きがあるのか。こうした情報は、地域で暮らす人にとって大きな価値があります。

生活に直結しやすく、検索される機会も多い。さらに、記事の型も作りやすいため、運営側にとっても継続しやすいテーマです。

けれど、ローカルメディアはその型しか許されていないわけではないと思っています。

地域の魅力は、ニュースになる出来事だけにあるわけではありません。お店の空気感、店主の考え方、サービスが生まれた背景、そこで過ごす時間の心地よさ。そうしたものも、地域で暮らす人にとっては大切な情報です。

特にRe:HIRAKATAでは、先行メディアと同じように地域ニュースを追いかけるのではなく、記憶の中に残る情報を届けたいと考えました。

早く知ることより、後から読み返したくなること。
広く知らせることより、必要な人の暮らしに自然につながること。
話題性より、その場所や人の背景まで伝わること。

ローカルメディアには、地域のニュースを届ける役割もあります。けれど同時に、地域で暮らす人が、自分に合うお店やサービス、過ごし方を見つけるための入口にもなれるはずです。

だからRe:HIRAKATAでは、地域ニュース型の媒体を目指すのではなく、「枚方でどんな暮らしを選べるのか」を届ける媒体として立ち位置をつくることにしました。

「枚方市民なら誰でも」ではなく、40代の働く女性に読者を絞った

手帳を開いて考えを整理する女性

Re:HIRAKATAを設計するとき、読者像はかなり具体的に考えました。

対象は、枚方で暮らす40代の働く女性。毎日を忙しく過ごしながらも、暮らしを少し整えたいと思っている人。便利さだけでなく、お店の雰囲気や背景、信頼できる理由まで含めて、自分に合う選択肢を見つけたい人です。

「枚方市民なら誰でも」と広く設定すれば、入口は広く見えます。けれど実際には、誰に向けて書いているのかが曖昧になり、記事の選び方も、写真のトーンも、言葉の温度感も揺れやすくなります。

たとえば、同じカフェを紹介するとしても、読者像によって見る場所は変わります。

安さや味、メニューの豊富さ、駅からの近さを重視するのか。それとも、空間の落ち着きや、店での過ごし方、店主の想いまで伝えるのか。

同じ場所を扱っていても、誰に届けるかで、記事の切り口はこんなにも変わります。

Re:HIRAKATAでは、「枚方で叶える、ちょっとだけ丁寧な暮らし」というコンセプトに合わせて、読者が日常の中で無理なく取り入れられる選択肢を届けることを大切にしました。

だから、親しみやすさを前面に出すより、上品に。
強いインパクトで引き込むより、誠実に。
その場で消費される話題より、暮らしの中にじんわり沁みる情報へ。

読者像を絞ったことで、Re:HIRAKATAの中で「載せる理由」と「載せない理由」、そして載せる場合の伝え方がはっきりしました。

この判断基準ができたことが、後発メディアとして大きかったと思います。

読者を絞ることは、読まれる人を減らすことではありません。誰に深く届く媒体なのかを明確にすることです。

その立ち位置を決めたことで、先行メディアと同じ土俵で競うのではなく、別の理由で選ばれるローカルメディアを目指せるようになりました。

先行メディアへの敬意があるからこそ、同じやり方をなぞらない

明るい窓辺に置かれた観葉植物

ここまで、Re:HIRAKATAが先行メディアと変えたことについて触れてきましたが、戦いたいわけではありません。

「枚方つーしん」さんには「枚方つーしん」さんの考えがあり、戦略があります。長く地域の情報を届け続け、枚方で暮らす人に読まれる媒体を育ててこられたことには、強い敬意があります。

やり方や媒体のトーンは違っても、枚方の魅力を発信し、地域を盛り上げたいという「愛」は共通していると思っています。

ただ、後発のメディアが先輩のやり方をそのままなぞっても、事業として成立させるのは難しい。認知度、記事数、情報提供の集まりやすさ、読者との関係性には、先行メディアが積み上げてきた時間があります。

だからこそ、Re:HIRAKATAでは同じ型を追いかけるのではなく、別の役割を持つことを選びました。

それは先行メディアを否定するためではなく、地域の中でRe:HIRAKATAが担える役割を明確にするための判断でした。

同じ地域を扱っていても、媒体ごとに届けられる価値は違います。

誰かが担っている役割を奪いに行くのではなく、自分たちだから担える役割を見つける。後発メディアに必要なのは、先行メディアへの対抗心ではなく、その地域の中で自分たちがどの位置に立つのかを設計することだと思っています。

検索キーワード、記事テーマ、写真、文章の温度感、サイト全体の導線。それぞれを「枚方で叶える、ちょっとだけ丁寧な暮らし」というコンセプトに合わせて整えたことで、後発であっても選ばれる理由を少しずつ積み上げることができました。

結果として、立ち上げから約半年で「枚方市 ローカルメディア」の検索結果上位1位を獲得することができました。

これは、先行メディアに勝ったという話ではありません。

同じ土俵で競うのではなく、別の役割を明確にした結果として、Re:HIRAKATAを必要としてくれる人に届き始めたということです。

後発のローカルメディアにとって、差別化とは奇抜な見せ方をすることではありません。先行メディアを否定することでもありません。

敬意を持ちながら、自分たちがなぞらない道を決めること。

それが、Re:HIRAKATAで考えた差別化と運営戦略でした。


CONTENTS
情報過多の時代に、価値が届かない構造をどう変えるか。堀寛未が見た小規模事業者の情報流通課題
後発のローカルメディアは、先行メディアと同じ土俵で戦わない。Re:HIRAKATAで考えた差別化と運営戦略


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堀 寛未

社会事業開発ACTION代表。大阪府枚方市を拠点に、広報・ブランド設計・情報発信支援を行っています。ローカルメディア「Re:HIRAKATA」では、取材・記事制作・発信設計を一貫して担い、事業や地域の取り組みを、伝わる言葉と構成に整えることを得意としています。

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